DIARY

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園主の休日

「茶摘み」の歌にあるように、立春から数えて88日目の5月2日はは八十八夜。春から夏になる節目の日でである。ちょうどこの頃、茶摘みが最盛期であることから1990年に日本茶業中央会が「緑茶の日」と制定した。そう、このとおり5月は、茶の生産に関わる人間にとっては『超』がつくほど多忙な時期である。山下新壽園ももちろん、多忙な時期を迎える。あまりのストレスで園主の新貴はほぼ毎年、肌が荒れるのだそうだ。休みも取れないこの時期のストレス発散はないのか、園主に聞いてみた。

園主の休日

「茶摘み」の歌にあるように、立春から数えて88日目の5月2日はは八十八夜。春から夏になる節目の日でである。ちょうどこの頃、茶摘みが最盛期であることから1990年に日本茶業中央会が「緑茶の日」と制定した。そう、このとおり5月は、茶の生産に関わる人間にとっては『超』がつくほど多忙な時期である。山下新壽園ももちろん、多忙な時期を迎える。あまりのストレスで園主の新貴はほぼ毎年、肌が荒れるのだそうだ。休みも取れないこの時期のストレス発散はないのか、園主に聞いてみた。

"将来漁師になりたいくらい、釣りが好きなんです。
なので5月はどれだけ忙しくても、
満月の夜だけは必ず釣りに行くんです"

5月の満月の夜は、サンゴの産卵もあると聞いた。海の中で粉雪のように舞う無数の卵。サンゴは、体内に光を感じるセンサーを持っていて、月明かりを感知することができます。最も明るい月の光が引き金になり、タイミングを合わせるかのように、産卵をはじめるのだそうだ。5月の満月は特別なのだろう。

5月のこの時期は遅霜が発生したりすることもあるし、山下新壽園にとっては日本最高の玉露を目指して茶を仕上げる作業が続く。気を休める暇がない。だからこそ満月の夜、たった1日だけ夜釣りに出かけて気分を一新する。どれだけ疲れていても、満月の夜釣りが回復してくれるのだ。そして翌日からまた、最高の玉露を仕上げにかかる。

現園主の新貴は、3度の農林水産大臣賞を受賞しているが、それも5月の夜釣りがなければ叶わなかったかもしれない。茶作りとは無関係に思える釣りだが、至極の一杯をつくる玉露を支えているのだ。